アメリカで働いているけど老後資金として雇用主から401kを天引きされる額だけで老後資金が足りるのかまったく見当がつかない。公的年金であるソーシャルセキュリティ年金はいくらもらえるのかもわからない。401k以外にどんなオプションがあるのか教えてほしい。
アメリカで働いているなら日本より税優遇の投資口座がたくさん種類があります!401kだけでなくIRAやRoth IRA、HSA、403bに457も利用しましょう!それぞれの違いを説明していきます。
401k, 401a, 403b, 457, IRA, Roth IRA, HSAの違い、メリット、デメリットを解説。
アメリカの公的年金制度
まずはソーシャルセキュリティ(公的年金)がいくらもらえるのか調べてみよう
以前にブログで目安としてアメリカでの退職後の生活費は、退職前の約80%と書きました。例えば退職前に月5千ドル(50万円)の生活費の方だと、老後は月4千ドルがかかる計算になります。アメリカは医療費を含め物価が日本より高いので、日本での老後資金より多く必要になると考えましょう。ここからソーシャルセキュリティ(公的年金)をいくらもらえるのか調べて、差し引くことで、自分で用意しないといけない老後資金の目安を計算することができます。
雇用者の場合、ソーシャルセキュリティ税はお給料から天引きされています。これを約10年間払い続けることでソーシャルセキュリティを受取る資格が発生します。まずは自分のソーシャルセキュリティがいくらもらえそうなのかの見積もりを、ソーシャルセキュリティのウェブサイトで確認することから始めましょう。もちろん見積もりですので、この額が補償されているわけではありません。収入が今後、増減する方は見積もりの正確さに影響します。
長年働く人はソーシャルセキュリティは最も収入の多かった35年間分から計算されます。収入が多ければそれなりに見合ったソーシャルセキュリティをもらえます。日本と同じで年金を受け取る時期を遅らせると年額でより多くもらえるという仕組みになっています。ある程度の収入を超えるとそれ以上は頭打ちとなります。
収入が配偶者と比べて大きな差がある場合は、配偶者のソーシャルセキュリティ年金の半額か、自分の年金のどちらか多い方をもらえるという仕組みになっています。離婚しても10年以上結婚していた場合はこの仕組みを利用することができるそうです。
一つ注意点ですが、日本でも国民年金保険料を納めていないと国民年金がもらえないように、アメリカでも節税対策で申告する所得を減らしていると、のちにソーシャルセキュリティ年金額が減ってしまうということがあることも考慮しておきましょう。 貯金や投資がインフレで目減りしてしまうのとは対照的に、ソーシャルセキュリティ年金の良いところはインフレを考慮して調節してくれることです。そういうインフレ対策保証がある老後の資金源は他にはないです。特に自営業の方で節税対策を駆使して、所得額を減らしている方はそこも考えて財テクしてくださいね。
ペンションって聞くけど、今もあるの?
これから退職資金を貯蓄しようという人でいわゆる雇用主からも年金をもらえるペンション(年金の種類)がある人は、ほとんどいないのではないのでしょうか。雇用主側からしたらどれだけ長生きするかわからないのに、退職者にずっとお金を払い続けるというのはとても負担が大きく、現在はほとんどの雇用主はペンション制度を縮小またはやめて、確定拠出型の401kや401aに乗り換えています。ペンションがもらえる人は今となってはかなりまれですが、一部の公務員や教職、警察や消防、労働ユニオンに参加している職業、電気、水道、ガスなどの分野では新規雇用者でもペンション制度加入の可能性があるので、そういう職業の方は、お仕事を探すときは少し注意深く見てみましょう。
職場でできる税優遇、積立型投資口座
401kまたは401aは雇用主のマッチ分はマックス利用すべし
それなりに大きな雇用主に雇われている方々の多くは401kという確定拠出型の投資口座に老後資金を積立投資することができます。雇用主がマッチしてくれる場合は最大限に利用しましょう。例えば自分の積立て分が年収の最大5%まで、雇用主が最大5%までマッチしてくれる場合は、いわば年収の5%を雇用主が授与してくれるわけです。もし自分が3%だけ積立する選択をすると、雇用主も3%しかマッチしてくれません。そうするとせっかくただでもらえるお金を断っているようなものです。
例えば年収が10万ドル(約1千万円)の場合:
自分の積立5%(5千ドル)+ 雇用主からの5%(5千ドル) = 年収の10%(1万ドル)を積立できる。
自分の積立3%(3千ドル)+ 雇用主からの3%(3千ドル) = 年収の6%(6千ドル)を積立できる。 雇用主からの2千ドルは断っているようなもの。
教育関係や政府・公務のお仕事の場合は401kではなく401aと呼ばれている場合がありますが、仕組みは基本的に同じです。401k/401aはいわゆるpre-taxの計算、つまり積立に回した分はその年の所得とはみなされません(税金をかける前の所得から引いてもらえるから税金前、pre-taxと考えればよい)。そのため節税につながります。引出す際に所得税がかかる仕組みとなっていますが、戦略的に引き出すことで引出す際にも節税することができます。
メリット:雇用主からのマッチがあることが多く、その分、積立てるだけでお金がもらえる。所得から控除されるので、今、節税できる。
デメリット:雇用主が選んだ投資会社のプランで投資の商品幅が少ない。雇用主がうまく投資プランを選んでいないと手数料が高いプランしかない場合もある。 一定の年齢に達するまで引出すことができず、それより前に引出すとペナルティがかかる。
個人で行う積立式投資口座
個人型の老後資金投資口座、IRA(Traditional IRA)とRoth IRAの違い
IRAはIndividual Retirement Account(個人型老後資金口座)で、雇用主を通してではなく、個人で開設できる積立口座です。通常のIRA口座(Traditional IRAと呼ばれます)は401kや401aと同じように、積立に回した分は、その年の所得とみなされない税優遇策があります。引出し時には、その年の収入として税が課されます。アメリカで収入のある方ならだれでも口座を開設することができます。50歳以下の方なら年間6千ドルまで、50歳以上なら7千ドルまで積立てることができます。59歳と6カ月の年齢に達する前に引出すと、通常の税金だけでなくペナルティを払うことになるので、一度入れたら59歳6ヵ月に達するまでは触らない心構えが必要です。またお金を引き出す必要がなくても72歳に達すると、一定分を引出すことが条件となっています。
配偶者に収入が十分なかったとしてもこの口座は開設することができます。その場合はお金はあなたから拠出されたとしても、この資産は口座の名義人である配偶者が所有することとなります。例えばパートナーが失業中でも、あなたに収入があれば税優遇のきくこの口座に入金することができます。
メリット: 所得から控除されるので、今、節税できる。 自分で投資会社やプランを選べるので、手数料の安い商品を選べる。自分の好みで手堅い投資やアグレッシブなプランをセレクトすることができる。
デメリット:一定の年齢に達するまで引出すことができないこととなっており、医療費や教育費などの理由で引出すと通常の税金に加えてペナルティがかかる。
Roth IRAは税金課金後(post-tax)の 老後資金積立口座 です。Roth IRAに入金したお金をその年の所得から控除することはできません。税優遇は引き出し時になります。Roth IRAの口座での投資がどれだけ増えても、引き出し時には収入とはみなされず、引き出し時に所得税を払う必要がありません。つまり税金は前払い(入金時)です。
また自分が入金した分(投資で増えた分ではなく)は入金から5年経った時点でどんな理由でも引き出すことができます。一定の年齢になると引出さないといけないといった条件がなく、いつまでもRoth IRAにお金を入れておくことができます。自分が亡くなった後も、遺産としてRoth IRAを受け継いだ人はずっとこの口座を保持することができ、引出すときも税金はかかりません。Traditional IRAよりも自由がきく口座といえるでしょう。この口座も、配偶者のうちの一人だけでも収入があれば入金することができます。
Traditional IRAとRoth IRAは両方の口座を持つことができますが、入金は年間で合わせて6千ドル(49歳以下の場合)か7千ドル(50歳以上)です。
メリット: 税金は前払いしているので、引出し時にどんなに資産が増えていても税金を払わなくてもよい。入金から5年たてば入金分のみ引出し可能。ずっと引出さずに資産運用して、遺産として残すことができる。
デメリット:post-taxの計算となるので、今、現在の税の控除ができない。
ヘルス・セービング・アカウント(Health Saving Account:HSA)
HSAは自分が持つ健康保険の免責額(deductible)が高い方のみが開設できる投資口座です。Flexible Saving Account (FSA)と間違えられることがありますが、この二つは全く異なります。HSAの趣旨は、健康保険の免責額が大きくて医療費が多額にかかってしまう可能性のある人たちに税優遇をしようというものです。HSAはpre-tax、つまり入金時の年間所得から入金分を控除して節税することができます。HSAはなんと引き出し時にも所得税が課されません。ただし医療費関係のみでの出金となります。何が医療費とみなされるかは割と幅広いので、医療費の高いアメリカでは恐れずにHSAに投資をするとよいでしょう。年間に入金できる額は限られており、個人なら3650ドルまで(54歳以下)です。それ以降は1000ドル上乗せできます。引き出しはいつでも可能で、一定の年齢に達したからと言って引出しはじめないといけないわけではありません。
ちなみにFSAは健康保険の免責額が高くない場合に、雇用を通して提供される場合がある口座です。こちらは投資口座ではありません。Pre-tax扱いで、入金額を年間所得から差し引くことができるという税制の優遇はありますが、その年の終わりまでに使い切らなかった積立額は消失してしまうので現実的な分のみ入金しましょう。こちらも医療費とみなされる項目は幅広いです。
401k以外の職場でできるかもしれない税優遇、積立投資
403bが利用できる場合は、利用すべし
403bとは聞きなれない人が多いかと思います。教育関係者や公務員など一部の雇用者にのみ提供されることがある老後資金積立口座です。Pre-tax扱いで入金の年間限度額は2022年では20,500ドル(49歳まで)、50歳以上は27,000ドルを積立に回すことができます。入金する年に節税しながら投資できます。
給与後払い457口座(Deferred Compensation 457)
457とはDeferred Compensationとも呼ばれる老後資金の投資口座です。こちらも公立の教育関係者や公務員など一部の雇用者にのみ提供されることがあります。ざっくり訳すと「給与後払い投資口座」です。自分の雇用主に「給与の一部を後払いにしてもらう」または「給与の一部を雇用主に貸す」という形で、もらえるはずの給与を投資するというものです。よってpre-taxの税制優遇になります(入金する年に税優遇)。 Pre-tax扱いで入金の年間限度額は2022年では20,500ドル(49歳まで)、50歳以上は27,000ドル積立に回すことができます。 他の投資口座より優れている点は、投資限度額が大きいことと、一定の年齢に達する前の引出しににペナルティがかからないことです。なぜなら後払いにした給料を受け取るだけだから、と考えれば納得ですね。ただペナルティなしでの引き出しなだけに、敷居は高めに設定されており、緊急事態のみでの引き出し可能となっています。
テクニカルな話ですが、実際には給料を後払いにしてもらっているというわけではないと思うのですが(その分がきちんと自分の投資口座に入金されて積み立てられていくので)、一応は引出すまでは、雇用主がこの資産の持ち主ということになります。万一、雇用主が倒産した場合はせっかく積立てていた資産が消える、ということになります。まぁ、公立の教育機関や公務員に提供される口座なので、倒産することはまずないと思いますが。雇用主側のメリットとしては、雇用者への福利厚生として魅力的な人材を惹きつけることができる、といったことでしょうか。
投資初心者には
投資口座に優先順位をつけるなら
色々ありすぎて何を優先したらいいのかわからない、という方のために私の個人的な優先順位を公表したいと思います。
- 401k/401a: 雇用主からのマッチングがある401kまたは401aは、マッチング最大限分は投資しましょう。
- HSA:健康保険の免責額が大きい場合はHSAを開いて、できれば毎年最大限投資し続けて、アメリカで骨をうずめる気なら医療費が大きくなると思われる退職後まで触らないことです。Pre-tax/Post-tax両方で税優遇される非常に稀な口座です。
- Traditional IRAまたはRoth IRA:現在の所得が少ない場合はRoth、高所得者の場合はTraditioanl IRAがおすすめです。403bと457より優先するのは、個人で好きに選べるため投資商品が豊富で手数料の安い手堅い投資を見つけやすいからです。
- 403b:上記の口座を最大限利用してもまだ余裕がある方は、ぜひ403bも利用して節税しながら資産運用して増やしていきましょう。ただし雇用主がこのプランを提供していないと、口座を開設することはできません。また雇用主がセレクトしたプランの手数料も確認して投資するか決めましょう。
- 457:上記の口座を最大限利用してもまだ余裕のある方はこちら駆使して節税しましょう。急病などで引出す場合のペナルティがないので457を非常時の備えとして、銀行口座の代わりに使うというアイデアもあります。ただし投資しているので、その時に株価が下がっていると目減りしている額を引出す羽目になるリスクがあります。なのである程度の緊急用の備えはすぐにアクセスできる銀行口座に持っておくべきでしょう。
どの証券会社を使ったらいいかわからないなら
アメリカの証券会社で手数料が低くバランスの良いインデックスファンドやETFがあるのはFidelity、Vanguard、Charles Shwabです。どの会社も手数料が安く設定されていますが、一番使いやすくておすすめするのはFidelityです。
まとめ
アメリカの公的年金や積立投資型年金の制度はしっかり調べて上手に利用すれば怖くありません!バランスの取れた投資、手数料の少ない投資をすればリスクを上手に減らすことができるでしょう。しっかり調べて自分に合った積立投資貯蓄をしていきましょう!
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